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商社バックオフィス

サンクションリスト自動照合システム

鉄鋼製品を扱うグローバル商社では、取引先がアメリカ財務省OFACのサンクションリスト(制裁対象者リスト)に該当しないかを毎回手作業で照合しており、コンプライアンス担当者が多大な時間と心理的負担を抱えていた。OFACが公開するAPIは存在したが、専門知識を持つ開発パートナーが見つからず実装できずにいた。CatallaxyがAPIを活用した自動照合システムを開発し、月8時間の作業時間削減とコンプライアンス体制の強化を実現した。

ROI

200%

年間削減時間

96h

人件費削減効果/年

Before / After

Before

ウェブサイトからExcel形式のサンクションリストをダウンロードし、取引先名を一件ずつ目視で照合。表記ゆれにも注意しながらの確認には1件あたり15〜20分を要し、見落としリスクとダブルチェックの負担が常につきまとっていた。

After

OFACのAPIと連携し、取引先情報を入力するだけで自動的に最新のサンクションリストと照合。あいまい検索で表記ゆれにも対応し、照合結果と監査証跡も自動記録。1件あたり数秒で完了するようになり、月8時間の作業時間を削減した。

Story

課題の背景

グローバル市場で鉄鋼製品を扱う商社にとって、国際的なコンプライアンス遵守は事業継続の生命線である。特に外国向けに鉄鋼を販売する商社では、取引相手がアメリカ財務省外国資産管理局(OFAC)が管理するサンクションリスト、いわゆる制裁対象者リストに掲載されていないかを確認することが法的義務となっている。この確認を怠ると、多額の罰金や取引停止、さらには企業の信用失墜といった深刻なリスクに直面することになる。

ある鉄鋼商社では、新規取引先との契約前、既存取引先との定期的な確認、さらには取引のたびにサンクションリストとの照合作業を実施していた。しかし、この作業には大きな問題があった。アメリカのサンクションリストには数万件もの個人名、企業名、船舶名などが掲載されており、これらを手動で一つひとつ確認するには膨大な時間と労力が必要だったのである。

コンプライアンス担当者は毎日数時間をこの照合作業に費やし、表記のゆれ(例:「株式会社」と「Co., Ltd.」、漢字とローマ字表記の違いなど)にも注意を払いながら、慎重にチェックを進めていた。しかし、人的作業であるがゆえに見落としのリスクは常に存在し、ダブルチェック・トリプルチェックが必要となる。また担当者の心理的負担も相当なものであった。さらに、サンクションリストは頻繁に更新されるため、最新の情報を常に把握しておく必要があり、この点も業務を複雑化させていた。

「技術のための技術」ではなく「ビジネス課題を解決するための技術活用」。

「使えないAPI」というジレンマ

実は、アメリカ財務省OFACはサンクションリストデータへのアクセスを容易にするため、API(Application Programming Interface)を公開していた。このAPIを利用すれば、プログラムを通じて自動的にリストを取得し、照合作業を効率化できる可能性があった。商社の経営陣もこの存在は把握しており、自動化による業務改善を望んでいた。

しかし、ここに大きな壁が立ちはだかった。APIの実装には専門的なプログラミング知識が必要であり、社内にそのスキルを持つ人材がいなかったのである。外部のIT企業に相談してみたものの、金融規制やコンプライアンスに関する専門知識と、ソフトウェア開発の両方の知識を持ち合わせている企業を見つけることは容易ではなかった。また、見積もりを取ったところ、「経験がない」という理由で開発費用が予算を大幅に超えるケースもあり、プロジェクトは頓挫寸前の状態であった。

このような状況の中、クライアントは効率化を諦めかけていた。「APIは存在するが使えない」というジレンマに陥り、引き続き手動での照合作業を続けるしかないと考えていたのである。

そんな中、商社はCatallaxyという企業と出会った。Catallaxyは、複雑なビジネス課題に対してテクノロジーを活用した実用的なソリューションを提供する企業であり、特に製造業における上場企業でのコンプライアンスの知見を持っていた。

Catallaxyによる解決策

Catallaxyのチームは、まず商社の業務フローを詳細にヒアリングした。どのタイミングで照合が必要なのか、どのようなデータ形式で取引先情報が管理されているのか、照合結果をどのように記録・保管する必要があるのか、といった実務的な要件を一つひとつ確認していった。そして、OFACのAPIの仕様を徹底的に分析し、商社の既存システムとシームレスに統合できるソフトウェアの開発に着手した。

開発されたシステムは、以下のような機能を備えていた。まず、取引先の名称や住所などの情報を入力すると、自動的にOFACのAPIにアクセスし、最新のサンクションリストと照合する。次に、名称の表記ゆれやスペルミスにも対応できるよう、あいまい検索機能を実装した。さらに、照合結果は自動的に記録され、誰がいつどの取引先を確認したかの監査証跡が残るようになっている。そして、サンクションリストが更新された際には、既存の取引先情報と自動的に再照合し、新たにリストに追加された企業や個人がいないかをチェックする機能も搭載された。

また、Catallaxyは単にシステムを納品するだけでなく、商社の担当者がスムーズに使いこなせるよう、初日からでもマニュアルなしに利用できるようなわかりやすいユーザーインターフェースを設計し、丁寧な操作研修も実施した。日常業務の中で自然に使える仕組みを実現したのである。

Catallaxyが開発したサンクションリスト照合システムの導入後、商社の業務は劇的に変化した。最も顕著だったのは、作業時間の大幅な短縮である。以前は一件の取引先を照合するのに平均15分から20分かかっていたが、新システムでは数秒で結果が得られるようになった。月間で数百件の照合を行っていたため、これは累計で数十時間の業務時間削減を意味した。

導入効果と今後の展望

コンプライアンス担当者は、単純作業から解放され、より高度な判断が必要な業務やリスク分析に時間を割けるようになった。例えば、取引先の事業内容が制裁対象国と関連している可能性がある場合の詳細調査や、社内のコンプライアンス教育の充実など、本来注力すべき業務に集中できるようになったのである。

また、人的ミスのリスクも大幅に低減した。手動での照合では、どうしても見落としや確認漏れのリスクがあったが、システムによる自動照合では、設定されたルールに基づいて確実にチェックが行われる。これにより、コンプライアンス違反のリスクが大きく減少し、担当者の心理的負担も軽減された。

さらに、監査対応も容易になった。すべての照合記録が自動的にデータベースに保存されるため、監査や当局からの問い合わせがあった際にも、即座に必要な証跡を提示できるようになった。これは、企業のガバナンス体制の強化にもつながっている。

経営的な観点からも、大きなメリットがあった。業務効率化により、人件費の削減や、同じリソースでより多くの取引を処理できるようになり、事業拡大の余地が生まれた。また、コンプライアンス体制の強化は、取引先や金融機関からの信頼向上にもつながり、ビジネス機会の拡大にも寄与している。

このプロジェクトが成功した要因は、いくつかある。まず、Catallaxyが単なるシステム開発会社ではなく、ビジネスの課題を深く理解し、実用的なソリューションを提供できるパートナーであったことである。技術力だけでなく、商社の業務フローやコンプライアンス要件への理解が、使いやすく実効性の高いシステムの開発につながった。

次に、既存のAPI資源を最大限に活用したことである。ゼロからデータベースを構築するのではなく、公開されているOFACのAPIを効果的に利用することで、開発期間とコストを抑えつつ、常に最新の情報にアクセスできる仕組みを実現した。

また、ユーザー目線での設計も重要であった。高度な技術を使っていても、実際に使う人が操作しやすく、日常業務に自然に組み込めるインターフェースを提供したことで、現場での定着がスムーズに進んだ。

この成功事例は、商社内部だけでなく、同様の課題を抱える他の企業にとっても参考になるものである。現在、商社では他のコンプライアンス関連業務についても自動化を検討しており、Catallaxyとの協力を継続している。例えば、輸出管理規制のチェックや、取引先の信用調査なども、同様のアプローチで効率化できる可能性がある。

この事例は、「技術は存在するが実装できない」という多くの企業が直面するジレンマを、適切なパートナーとの協力によって解決できることを示している。APIやその他の技術的リソースは公開されていても、それを実際のビジネス価値に転換するには、専門知識と実装能力が必要である。

Catallaxyによるサンクションリスト照合システムの開発は、単なる業務効率化ツールの提供にとどまらず、商社のコンプライアンス体制の強化、従業員の働き方改革、そして事業成長の基盤づくりに貢献した。毎月の作業時間が大幅に短縮されたことは、定量的な成果として明確であるが、それ以上に、従業員が本来の専門性を発揮できる環境が整ったこと、企業のリスク管理能力が向上したことは、長期的な価値として評価されるべきである。

デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる現代において、この事例は「技術のための技術」ではなく、「ビジネス課題を解決するための技術活用」の重要性を示している。適切なパートナーとの協力によって、複雑な技術的障壁を乗り越え、実用的なソリューションを実現できることを、この商社とCatallaxyの取り組みは証明している。

今後も、グローバルビジネスにおける規制は複雑化し、コンプライアンス要件はますます厳しくなることが予想される。しかし、テクノロジーを効果的に活用することで、これらの課題を成長の機会に変えることができるのである。この事例が、同様の課題に直面する多くの企業にとって、解決へのヒントとなることを願う。

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